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胎嚢とは?妊娠検査で陽性にも関わらず確認できない場合の原因や成長過程を解説

医療法人みらいグループ
妊娠初期のエコー写真を持つ妊婦

妊娠検査薬で陽性が出たり生理が遅れていたりする理由で産婦人科を受診した場合、妊娠の可能性があれば子宮内に胎嚢が確認されることもあります。しかし、実際に胎嚢がどのような役割を担うのか、胎嚢の大きさによって何が問題なのか等は、知らない人の方が多いのではないでしょうか。

この記事では、胎嚢がどのような役割を持つものなのかを詳しく解説します。合わせて、胎嚢の成長過程や胎嚢が確認されなかった場合などについても紹介しているので参考にしてみてください。

胎嚢とは

胎嚢(たいのう)とは、妊娠して最初に作られる赤ちゃんを包むための部屋です。袋状になっており、羊膜、絨毛膜、尿膜、卵黄嚢(らんおうのう)の4層で構成されています。

胎嚢は英語で「Gestational Sac」と表記され、日本語に直訳すると「妊娠袋」という意味です。

胎嚢を形成している羊膜は内側を羊水で満たし赤ちゃんを外部の衝撃から守ります。また、卵黄嚢は胎盤が完成するまで赤ちゃんのための栄養として消費され、尿膜は羊水中の老廃物を排出し、絨毛膜は胎盤のもととなります。

胎嚢は赤ちゃんがこれから成長していくための必需品である袋です。

胎嚢が確認できる時期はいつから?

胎嚢は妊娠4週~5週頃に確認されます。しかし、この時期はまだ超音波検査などで胎嚢が確認されても、赤ちゃんは確認できないことが多いでしょう。

超音波では胎嚢内を満たす羊水は真っ黒に映るため、中に何も入っていない空っぽの袋状に見えます。しかし、その中にはこれから赤ちゃんとなる「胎芽」という組織が存在します。

胎嚢は1日に1mmずつ成長していくと言われているため、1週間後に再診すると胎嚢が驚く程大きくなっていた、なんてことも珍しくありません。

妊娠4週は生理予定日であるため、この時点で産婦人科を受診する人は少ないでしょう。

生理予定日を過ぎても月経が始まらず、1~2週間後に妊娠検査薬を使用して陽性反応を確認してから受診する方が多いため、殆どのケースで初回の受診では胎嚢が確認されます。

医師の「胎嚢が確認できた」という言葉の意味は?

産科医師が女性に説明している様子
妊娠の可能性があり、産婦人科を受診した人のなかには「胎嚢が確認できました」と医師に伝えられたにも関わらず「来週もう一度受診してください」と言われ不安を感じたというケースも少なくありません。

胎嚢が確認できたのに、出産予定日も伝えられず、母子手帳も発行できず「赤ちゃんに何かあったの?」と思う人もいるでしょう。

医師の言う「胎嚢が確認できた」という言葉は、子宮内で受精卵が正常に着床していることを表します

尿の中から検出されるhCGホルモンの数値によって妊娠の有無を調べる妊娠検査薬は、受精卵が子宮以外の場所に着床する異所性妊娠や、受精卵が着床状態を維持できずに流産してしまう化学流産、受精卵が異常な成長をしてしまう胞状奇胎などでも「陽性」と判定します。

そのため、超音波検査によって受精卵が正常な状態で子宮内に着床しているかどうかを調べる必要があり、正常に着床していることを「胎嚢が確認できた」と伝えているケースが多いです。

多くの場合、胎芽が成長し心拍が確認された時点で、出産予定日の算出や母子手帳の交付を案内するため、胎嚢が確認できている事と心拍が確認できている事は別の事象であることを理解しておくとよいでしょう。

胎嚢が確認できないとどうなる?

妊娠検査薬が陽性反応を示しているにも関わらず、胎嚢が確認できない場合は以下の可能性があります。

  • 異所性妊娠
  • 化学流産
  • 胞状奇胎

それぞれの状態についても詳しくみていきましょう。

異所性妊娠

異所性妊娠
異所性妊娠とは、いわゆる「子宮外妊娠」のことです。受精卵が子宮以外の場所に着床してしまうことを指し、多くの場合卵管などで着床してしまいます

着床した受精卵が成長して大きくなってしまうと、卵管破裂などを起こし母体の命に関わる症状を引き起こす可能性が高いです。そのため、異所性妊娠が確認された場合は外科手術などにより速やかに妊娠を終了させます。

異所性妊娠の場合、妊娠の継続は不可能です

化学流産

化学流産とは、受精した卵子が着床できなかったり、一度は着床したものの継続できず流産してしまうことを言います。正式名称を「生化学的妊娠」「生化学的流産」とも呼びますが、現状では妊娠や流産として扱われず「月経の遅れ」とされています。

なかには化学流産だと気付かないまま月経を迎えている人もいるでしょう。

しかし、近年妊娠検査薬の精度が向上し妊娠4週(月経予定日)から使用できる検査薬も増えています。これによって陽性の判定が出て卵子が受精していることを知ったにも関わらず、予定より遅れて月経がはじまり自分自身が化学流産を起こしたことを知る人も増えています。

正確に原因は分かっておらず予防法も確立されていませんが、何度も化学流産を繰り返す場合は、黄体機能不全などの病気が関係している可能性もあると報告されています。何度も化学流産を繰り返すようであれば、一度精密検査などを受けてみるのもよいでしょう。

胞状奇胎

正常妊娠と胞状奇胎の違い
胞状奇胎とは、受精卵が着床し胎嚢が作られたものの絨毛細胞が異常増殖してしまう症状です。超音波検査では絨毛細胞がブドウのように小さな円状の細胞で子宮を充満させている様子が確認されます。

胞状奇胎と確認された場合、手術などにより速やかに妊娠を終了させます。放置すると、腹痛や不正出血などの症状が起きる為、妊娠の継続はほぼ不可能です

また、胞状奇胎を発症した場合、母体には絨毛ガンを発症するリスクがあると言われており、定期的な経過観察を行うことが多いです。

胞状奇胎の原因は解明されていませんが、遺伝子異常である可能性が高いと言われており、500例に1例の割合で発症するという報告があります。また、母体年齢は40歳以上の場合、発症率が高くなることも分かっています。

胎嚢確認までに気を付けることはある?

胎嚢が確認されるまでは「〇〇に気を付けて過ごせば胎嚢が確認できる」なんてことはありません。

しかし、妊娠を希望しているのであれば、その期間の薬の服用や飲酒・喫煙などには気を付けた方がよいでしょう。

妊娠初期は薬剤の影響を受けやすいと考えられています。また、飲酒や喫煙も妊娠において悪影響を及ぼすことが分かっています。

胎嚢が確認できる、できないに関わらず、妊娠を希望している時点で、妊娠に影響のある薬の服用、飲酒、喫煙は控えた方がよいでしょう

また、妊娠が成立する前から葉酸を意識的に摂取するのがよいといわれています。葉酸には細胞分裂やDNAの形成をサポートする働きがあるため、妊活時から適切な量を摂取し不足しないように心がけておくのがおすすめです。

【妊娠週別】胎嚢の成長過程

胎嚢が確認されたということは、出産への第一歩を歩み出したということです。続いては、妊娠週数による胎嚢の成長過程について解説します。

妊娠4週

妊娠4週は、最終月経から4週後なので月経予定日に当たる週数です。一般的な妊娠検査薬の多くは妊娠5~6週、生理予定日の1週間後からの使用を推奨しているため、妊娠4週時点では妊娠に気付かない人が多いでしょう。

しかし、なかには妊娠超初期症状と呼ばれる症状を感じる人もいます。

子宮内では、受精卵が着床し胎嚢を形成しています。妊娠4週時点では約80%の妊婦に胎嚢が確認できると言われています。

妊娠4週時点の胎嚢の大きさは平均約7mmと言われていますが、胎嚢の大きさは個人差があり、2~16mmと極端に小さな人や極端に大きい人も見受けられるのが特徴です。

妊娠5週

妊娠5週は、月経予定日から1週間が過ぎ徐々に妊娠の可能性を疑い始める時期です。妊娠5週から使用できる検査薬も多いため、自宅で妊娠検査を行い陽性反応を確認する人も多いでしょう。

妊娠5週時点の胎嚢の大きさは平均約10mmです。しかし、この頃の胎嚢は1日に1mmずつ大きくなるため週の始めと週の終わりでは約7mmもの差が出ます。10mmよりも小さくてもそこまで心配しなくてよいでしょう。

まだ心拍は確認できませんが、早い人なら卵黄嚢が確認できることがあります。胎盤が完成するまで赤ちゃんの栄養源となる卵黄嚢は、胎嚢のなかに白い輪っか状に見えるのが特徴です。

妊娠6週

妊娠6週の胎嚢の大きさは平均約20mmです。多くの妊婦に胎嚢と卵黄嚢が確認でき、なかには胎芽(たいが)が確認できるケースもあります。

超音波画像で見ると、胎芽は輪っか状の卵黄嚢にくっつくように白く映ります。

妊娠6週頃からつわりの症状を感じる方も多く、妊娠に気付いて受診するケースが多いでしょう。しかし、心拍が確認できないことで再度受診を求められることも少なくありません。

妊娠6週で心拍が確認できないケースは珍しくないため、過度に不安にならず穏やかに過ごして再診を受けましょう。

妊娠7週

妊娠7週の胎嚢の大きさは平均約25mmです。ほとんどのケースで心拍も確認でき、出産予定日の算定や母子手帳の交付を受けるよう案内する産院も少なくありません。

心拍が確認できれば、胎嚢が多少小さくても特に問題ないとされることが多く、胎嚢の大きさを計測しないケースもあります。

妊娠7週時点での平均的な胎芽の大きさは11.5mm程度です。胎芽も胎嚢と同じく個人差が大きく、小さいケースや大きいケースがあります。しかし、基本的に心拍が確認できて徐々に大きくなっているのであれば問題ないと診断されることが多いようです。

妊娠8週

妊娠8週の胎嚢の大きさは平均約30mmです。胎芽が人の形になっていき、妊娠を実感できるでしょう。

妊娠8週頃には、胎芽は人の形を形成していき「胎児」と呼ばれるようになります。頭からお尻までの長さ(頭殿長)は平均12~15mmです。

妊娠9週

妊娠9週の胎嚢の大きさは平均50mmです。

妊娠9週の胎児の大きさは、頭からお尻までの長さが平均20~30mmです。徐々に人間らしい手足が形成されていきます。

妊娠10週

妊娠10週の胎嚢の大きさは平均60mmです。胎児は随分、人間らしい形になり、背中が丸まった状態からやや背筋を伸ばした体勢を見せてくれることもあります。

胎児の大きさ、頭からお尻までの長さが平均30~40mm、体重は5~8gほどで苺1粒と同じくらいの重さに成長します。

胎盤が徐々に形成されていきますが、まだまだ不安定な時期ではあるため、ママはなるべく無理をせず穏やかに過ごすのが望ましい時期です。

胎嚢確認後の流産の確率

胎嚢が確認されても、心拍が確認される前に受精卵が排出されてしまう化学流産や、心拍確認後も妊娠12週未満で起こりやすい初期流産など、ママは暫く心配や不安の尽きない日々を送ることでしょう。

妊娠12週までに流産を起こす確率は約10%と言われています。10人に1人の割合で、妊娠初期に流産を起こしてしまうのは、決して低い確率とは言えません。

一方で、妊娠初期の流産の原因の大部分は遺伝子異常によるものだと考えられています。遺伝子異常の場合、受精した段階で遅かれ早かれ流産することは決まっているといっても過言ではありません。

ママの体調や過ごし方によって初期流産が起こる訳ではないため、防ぎようのない事であることを理解しておくことが大切です。

まとめ

今回は、胎嚢の役割や大きさ、成長について紹介してきました。胎嚢が確認できることで、異所性妊娠や胎状奇胎の可能性を排除し、正常に着床できていることが確認できます。そのため、胎嚢を確認できたことで安心するママも多いでしょう。

しかし、妊娠初期は妊娠中でもっとも流産が起こりやすい時期です。胎嚢が確認できたからといって安心せず、無理なく穏やかに日々を過ごすことを意識しましょう。

胎嚢や心拍が確認できた際には、大切に出産までの日々を過ごしていきましょう。

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この記事の監修
エナみらいグループ総院長 宿田 孝弘
宿田 孝弘
エナみらいグループ総院長
札幌・石狩の産婦人科「エナレディースクリニック」の宿田です。母と子に優しいお産、女性が求める医療がエナにはあります。札幌・石狩市での出産や婦人科疾患のお悩みなど、お気軽にご相談ください。