長い妊娠期間を経て出産予定日が近付いてくると、いつ陣痛がくるのかとドキドキしながら過ごすママも多いでしょう。可愛い赤ちゃんとの対面まであと少し。
陣痛のサインや判断ポイント・分娩の流れ等を把握して少しでも落ち着いてお産できるよう備えましょう。
陣痛とは
陣痛とは出産の際に起こる子宮の収縮運動。痛みが起こる陣痛発作と、痛みが収まる陣痛間欠を繰り返します。
陣痛は分娩が進むにつれて痛みが強く間隔も短くなりますが、日本産婦人科学会では痛みの間隔が10分以内(または1時間に6回痛む)になった段階で分娩が始まると定義しています。
陣痛の種類
陣痛には3つの種類があり「前駆陣痛」「陣痛」「後陣痛」に分類されます。
前駆陣痛 | 不規則で必ずしも分娩に繋がる訳では無い子宮収縮 |
---|---|
陣痛 | 分娩に伴い起こる子宮収縮 |
後陣痛 | 分娩後、子宮が通常時の大きさに戻る際に起こる子宮収縮 |
あまり知られていないのが、後陣痛。出産後まで痛いの?と初産のママは驚くかもしれません。後陣痛は産後3~7日程度続き、初産のママよりも経産婦の方が痛いと感じる事が多いようです。
陣痛と前駆陣痛の見分け方
陣痛を経験したことのない初産のママはお腹の痛みを感じても「陣痛?それとも前駆陣痛?」と迷ってしまうことでしょう。
陣痛と前駆陣痛には以下のような違いがあります。
痛みの間隔 | 時間経過による変化 | 痛み具合 | |
---|---|---|---|
陣痛 |
一定間隔(次の痛みがくるタイミングが予測できる)
|
徐々に痛みの間隔が短く、痛みが強くなる
|
腰の辺りから徐々に体の前面、下半身に広がる痛み
|
前駆陣痛 |
不規則
|
時間による変化はない
|
お腹全体がギュッと締め付けられるような痛み
|
前駆陣痛から陣痛に移行する人も中には居ますが、前駆陣痛は必ずしも分娩に繋がる訳ではありません。お腹の痛みを感じたものの、前駆陣痛だけで時間と共に痛みが遠のいたというママも多いです。
陣痛がはじまる兆候とは?5つのサイン
陣痛が始まる前に起こる兆候にはいくつかのサインがあります。
以下のような兆候があると、近々陣痛が起こるかもしれません。
【陣痛の兆候その1】破水する
破水とは羊膜が破れて子宮を満たしていた羊水が出てくることです。
陣痛の兆候として有名ですが、実は分娩前に破水する人は全体の約25%未満。大多数の人が分娩中に破水します。
しかし、破水した際には24時間以内に分娩が始まる場合が多いため陣痛の兆候としてかなり期待できるサインです。
破水は羊膜の破れる場所によって、出てくる羊水の量も異なるため大量に羊水が出て気付く人も居れば、尿漏れと勘違いして気付かないという人も。
羊水は尿と異なり白く水っぽいものの素人では判断が難しいため、量が少なく判断が難しい時は受診して検査してもらうと良いでしょう。
【陣痛の兆候その2】おしるしがある
おしるしも破水と同じく代表的な陣痛の兆候。分娩を前に、子宮壁にくっついている卵膜が剥がれた際に起こる少量の出血をおしるしといいます。
鮮血の人もいれば、ピンクのおりもののようなものだったというママもいます。
全ての人に起こるものではなく、おしるしが出ないまま出産を迎えたというパターンも珍しくありません。
また、おしるしが出たからといって必ず直ぐに陣痛が始まるとは言い難く、早い人では陣痛の72時間前に起こるという場合も。
おしるしがあったら、数日以内に陣痛が始まる心積もりをしておくと良いですね。
【陣痛の兆候その3】お腹の張りを感じる
多くのママが陣痛の起こる前にお腹の張りを感じています。
お腹の張りとは、子宮が収縮してキューっと締め付けられるような感覚があり、手で下腹部を触るとカチカチに固くなっている状態。
陣痛の兆候として現れるお腹の張りは痛みのない場合もあり、頻繁にお腹が張るなと思っていたら一気に陣痛がきたというママもいます。
お腹の張りを感じたら、まずは安静にして体が楽になる態勢をとりながら様子を見てみましょう。
【陣痛の兆候その4】お腹の痛み
出産の前日から当日にかけて多くのママがお腹の痛みを感じています。
この痛みが陣痛の始まりだったと振り返るママも多くいるでしょう。
この時の痛みは生理痛に似た腰に響く鈍痛だったり、下痢の時の腹痛に似ていたという声も。中には、寝ている時に痛みを感じて目が覚めたというママも居ます。
痛みのペースに規則性が出て来たと感じたら、痛みと痛みの間の時間を測ってみましょう。
【陣痛の兆候その5】後期つわりがおさまる
お腹が大きくなると吐き気や気持ち悪さに悩まされるママも少なくありません。
妊娠後期にもつわりに似た症状が出るのは珍しくなく、後期つわりとも呼ばれています。
後期つわりは大きくなった子宮に胃が押し上げられていることも原因の1つです。
後期つわりに悩まされたママの中には陣痛が来る前、急に吐き気が治まったという人もいます。これは出産が近付いた事で赤ちゃんの頭が骨盤内に下りてきて、子宮底の位置が下がったため。
押し上げられていた胃が圧迫されなくなってスッキリと感じたら、もうすぐ陣痛がくるかもしれませんね。
【その他】よくある陣痛の兆候
その他にも、下記のような兆候があったという声も多いです。
- 下痢になる
- おりものが増える
- 体のだるさを感じる
- 激しい胎動を感じる
- 腰痛が酷くなる
出産に向けてホルモンバランスが変化する中で、下痢やおりものの増加、体のだるさを感じる場合や、赤ちゃんが骨盤内に頭を嵌めるために激しい胎動を感じるという事もあるでしょう。
また、出産の際赤ちゃんが産道を通りやすいように、骨盤周辺の関節や靭帯を緩めるリラキシンというホルモンが分泌されます。その結果、緩んだ骨盤を支えるため筋肉に負荷がかかり腰痛が起こるママも珍しくありません。
陣痛がはじまったら冷静に行う3つの行動
陣痛が始まれば、いよいよ長い妊娠期間のゴールが見えてきます。
陣痛がきても直ぐに出産する訳ではないので、まずは冷静な行動を心掛けましょう。
かかりつけ医または助産師に連絡する
陣痛かどうかの判断が付かない場合でも、まずはかかりつけ医や助産師に電話をして指示を仰ぎましょう。
出産は24時間いつ起こるのか予測できないもの。そのため病院や助産師は、昼夜を問わず待機してくれています。受付時間外であっても、迷わず連絡を入れて下さい。
一般的には痛みの間隔が10分前後になったら連絡をしますが、家から産院までの距離が遠い場合などはもっと早く連絡しても良いです。
尚、破水した場合は陣痛が始まっていなくても迅速に連絡しましょう。
軽食をとる
初産の場合痛みの間隔が10分を切ってから生まれるまでに、12~16時間かかるといわれています。長時間の分娩に備えて痛みが弱いうちに軽食をとっておくと良いでしょう。
シャワーを浴びる
分娩中は季節に関係なく汗をかく事もある上、産後すぐにシャワーを浴びることはできません。陣痛の間隔が短くなる前にサッとシャワーを浴びておくのがおすすめです。
ただし、破水している場合は胎内に雑菌が入り込みやすくなってしまうのでシャワーは控えましょう。
産院や病院への交通手段は慎重に考えて
正産期が近付いてきたら産院や病院までの交通手段を考慮しておく必要があります。
もちろん陣痛が始まっているママが車を運転するなんてもっての他です。
途中で破水したりお産が急激に進むことも踏まえて、出来る限り公共交通機関を避けて家族の運転やタクシーを利用するのがおすすめ。
中には陣痛時の利用を前提とした「陣痛タクシー(マタニティタクシー)」等のサービスを提供している会社もあります。
こんなサインは要注意!出産予定日前の危ない兆候
妊娠は赤ちゃんが生まれるその瞬間まで何が起きるか分からないもの。特に正産期が近付くママに気を付けて欲しい危険な兆候をご紹介します。
慢性的な強い吐き気
毎日同じ時間帯やタイミングで起こる慢性的な強い吐き気を感じたら注意が必要です。
妊娠中に増える黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で、ママの体の中では下部食道括約筋が緩まり胃液が逆流しやすい状態になります。
そのため、慢性的に吐き気を感じている場合、逆流性食道炎を起こしていることも。
また、妊娠高血圧症が引き起こす妊娠高血圧腎症を発症している場合も吐き気を感じることがあるので、症状がある場合は医師に相談するのが良いでしょう。
激痛・大量出血
正産期の近いママが最も気を付けるべき病気が常位胎盤早期剥離です。
これは、陣痛が始まる前に赤ちゃんに酸素や栄養を送る胎盤が剥がれてしまう病気。
完全に胎盤が剥がれ落ちてしまえば、赤ちゃんは胎内で窒息してしまいます。
この病気には激痛や大量出血が伴うので、症状が出た際は直ぐに病院へ向かいましょう。
常位胎盤早期剥離は進行してしまうと赤ちゃんの命に関わるため、赤ちゃんの体が外界で生きていける程度に成熟しているなら緊急帝王切開手術で赤ちゃんを取り上げることも珍しくありません。
妊娠37週未満の陣痛兆候
赤ちゃんは37週0日を迎える頃に、外界で生きていける機能が全て発達するとされています。
そのため37週未満の出産は全て早産と分類され、成長のゆっくりな赤ちゃんが正産期より早く生まれてしまうと様々なリスクが発生してしまうことも。
37週未満で陣痛の兆候を感じたり、陣痛が始まったと感じた際には直ぐに医師の指示を仰ぎましょう。
赤ちゃんの成長具合を診察して十分に体が発達しているならそのまま分娩、まだ体が未発達であれば陣痛を抑える薬を投与して赤ちゃんを胎内に留める処置を行う場合が多いです。
酷い頭痛やめまい
酷い頭痛やめまいを感じる場合にも注意が必要。普段の検診の際にも高血圧を指摘される人の場合、妊娠高血圧症候群を引き起こしている可能性もあります。
妊娠高血圧症候群は脳出血や胎盤早期剥離の原因となるとも言われているため、めまいや頭痛を感じたら放っておかず医師に相談してみましょう。
1時間以上胎動がない
出産が近くなると胎動が少なくなると言われていますが、これは胎動が全くなくなるという訳ではありません。赤ちゃんの胎動を1時間以上感じなくなった場合、深刻な状況になっている可能性も。
「今日はあまり胎動が無いな」と感じたら、安静にして赤ちゃんの胎動をカウントしてみましょう。1時間以上胎動を感じない場合、直ぐに医師に連絡してください。
いよいよ分娩開始!出産の流れ
陣痛がはじまれば赤ちゃんとの対面まであと少しです。ここでは一般的な分娩から出産までの流れを把握しておきましょう。
分娩の流れ
陣痛や破水を経て、病院や産院に向かうと医師によって母子の状態やお産の進み具合を診察されます。
診察後は入院の手続きを行い、陣痛室で子宮口が開くのを待つ事になります。
陣痛室から分娩室へと部屋の移動をすることなく、陣痛・分娩・回復までを同じ部屋で行うことができる「LDR室」が備わっている産院もあります。
陣痛で痛みがつらいときに部屋を移動する必要がなく、産婦さんの肉体的な負担が軽くなります。
痛みにいきみそうになりますが、上手く逃しながら子宮口がある程度開くまで待ちましょう。
この間にお産による会陰の裂傷を防ぐために会陰切開を行う場合もあります。
※当院では不必要な会陰切開はいたしません
いよいよ子宮口が開ききったら分娩台に移動。そして出産を迎えることとなります。
当院ではフリースタイル出産を推奨しており、その時々の状態により、布団or分娩台で、楽な姿勢で出産を行っていただきます。
分娩後、赤ちゃんは沐浴や身長体重の計測、ママは胎盤の排出と会陰の処置を行い分娩は終了です。
この流れの中で子宮口が全開になるまでを分娩1期、子宮口が全開になってから出産までが分娩2期、出産後胎盤の排出までを分娩第3期と呼びます。
分娩1期
分娩1期では、子宮口が2.5㎝までを潜伏期、4cmまでを加速期、9㎝までを極期、全開までを減速期と言います。
破水せずに分娩が始まったママも、減速機までの間に破水する場合が多いです。
子宮口の開き | 所要時間の目安 | 陣痛の間隔 | |
---|---|---|---|
潜伏期 |
0~2.5cm
|
20時間以内(経産婦は14時間以内)
|
5~7分おき
|
加速期 |
2.5~4cm
|
約2~3時間
|
10分以内
|
極期 |
4~9㎝
|
約1時間
|
3分おき
|
減速期 |
9~全開
|
約1時間
|
1~2分おき
|
分娩1期では陣痛の痛みと共にいきみたくなりますが、子宮口が完全に開かなければ赤ちゃんは出てこられず体力を消費してしまうばかりです。
呼吸や指圧によっていきみ逃しをしながら出産まで体力を少しでも温存しましょう。
分娩2期
子宮口が全開になって赤ちゃんを取り上げるまでが分娩第2期。
子宮口が全開になると、ママのいきみと共に赤ちゃんは自ら旋回しながら産道をゆっくりと進みます。
分娩2期にかかる時間は初産で約1~2時間、経産婦の場合30分~1時間程だと言われています。
医師や助産師の指示に従い最後の力をふりしぼっていきみ、産道を通ろうとしている赤ちゃんを後押ししましょう。
分娩3期
赤ちゃんが無事取り上げられた後は分娩第3期で、胎内に残った胎盤を排出します。
胎盤は出産後1時間以内には自然とはがれ落ちるため、軽いいきみでも排出することができるでしょう。
出産後休む間もなく子宮は元の大きさに戻ろうと収縮をはじめるため、人によってはこの段階で後陣痛がはじまる人もいます。
分娩時間は最高でどの位続くの?
初産でも短時間で出産まで至るママが居れば、経産婦でも出産まで長時間かかることも。出産はまさに十人十色、予測も難しいでしょう。
基本的に正常な分娩にかかる時間は、初産で30時間以内、経産婦は15時間以内と定義されています。
この時間を超過してしまう場合や、分娩の進み具合で超過が予想されるという判断を受けた場合を遷延分娩と言います。
遷延分娩になると、状況に応じて陣痛促進剤の使用や吸引分娩などの医学的介入を受けることが珍しくありません。
特に初めての出産を控えているママは「長くても30時間前後頑張れば赤ちゃんに会える」と思えば、不安も和らぐかもしれませんね。
まとめ
出産は、赤ちゃんがこの世に生を受けるその瞬間まで絶対的な安心はありません。
ほんの少しでも不安に思うことがあれば、医師や助産師に遠慮することなく相談しましょう。
痛みや不安で緊張しがちな分娩ですが、医師や助産師が的確にサポートをしてくれます。
不安や恐怖に負けず、可愛い赤ちゃんを迎えるために頑張って下さいね。