出産と言えば、分娩台に乗って大きく足を開き赤ちゃんを産むイメージが強いですよね。
しかし、出産は必ず分娩台で行わなければいけないという決まりはありません。
出産においての選択肢が増える中で「フリースタイル出産」が注目を集めています。
この記事では、フリースタイル出産について出産方法やメリット・デメリット、費用や分娩方法についても紹介しています。
自分らしく自由なお産をしたいと思っている方はぜひ参考にしてみて下さい。
フリースタイル出産とは?
フリースタイル出産とは、ママの意思を尊重したお産への取り組みのこと。
ママの「こんな風にお産をしたい」という気持ちに寄り添い、医師や助産師がサポートしてくれます。
赤ちゃんをどこで産むのか?どんな体勢で産むのか?等、ママが希望することに対してアドバイスやサポート・環境作りをしてもらえるので、従来の分娩台出産に捉われないお産が可能です。
フリースタイル出産は徐々に認知度が高まり、フリースタイル分娩・アクティブバース・ナチュラルバースなど様々な呼び方で広まっています。
フリースタイル出産が注目されている理由
人類が地球に誕生して現在に至るまでの過程で見ると、仰向けでの出産は歴史も短く新しい方法です。
4足歩行の頃は四つ這いで出産していたでしょうし、日本でも江戸時代から昭和初期までは天井から吊るした綱を握って座った状態で行う坐産(ざさん)が一般的でした。
それ以降も1950年頃までは自宅の布団の上で出産する人の割合が多かったです。
医療の発達により出産する場所が自宅から病院に変わり、医師や助産師の処置のしやすさを考えて分娩台出産が普及。今や分娩台出産が一般的になりました。
しかし世界保健機構(WHO)の出産ケアに関する発表では以下のようなお産が推奨されています。
引用URL:WHO推奨 ポジティブな出産体験のための分娩期ケア
出産方法の原点に戻って自由にお産することの有効性を理解している産院によって、少しずつフリースタイル出産の取り扱い件数は増えつつあります。
取り扱い件数の増加に伴い実際にフリースタイル出産を体験したママの口コミによって注目されるようになってきました。
フリースタイル出産のメリット7つ
フリースタイル出産によって得られるメリットには様々なものがあります。
【メリット1】リラックスして出産できる
現在一般的に行われている分娩台での出産。医療スタッフに囲まれて、慣れない分娩台に乗るだけで緊張してしまうというママは少なくありません。
フリースタイル出産は、ママの思いのままに自由な体勢でお産を進めます。横になっている人も居れば、立ったままの人、部屋の中を歩き回って痛みを逃すという人も。
医療スタッフは、自由な体勢で陣痛に耐えるママに寄り添ってお産が安全に進んでいるのかを見守ってくれます。
陣痛の痛みを逃すために楽な体勢を探すことで、自分がよりリラックスできる姿勢を見つけることができるのもフリースタイル出産の大きな魅力の1つです。
【メリット2】スムーズな分娩が期待できる
仰向けにこだわらない事で、リラックスして出産できるフリースタイル出産では比較的スムーズな出産が期待できます。
スムーズなお産に欠かせないリラックス状態。ママの体をリラックス状態にすることで、緊張による筋肉の収縮を防ぎ、産道を緩める効果も期待できます。
必要以上の緊張状態を防ぐことで赤ちゃんは産道を通りやすくなり、スムーズにお産が進む可能性が比較的高いということです。
お産がスムーズであるということは、ママの体の負担も少なくて済むということ。
赤ちゃん産んだ後は、昼夜を問わないお世話が始まります。出産がスムーズでダメージが少ないママは、育児のスタートも体力面でスムーズに行いやすいと言えるでしょう。
【メリット3】赤ちゃんへの負担軽減が期待できる
陣痛の痛みに耐えるために息を止めてしまうママも少なくありません。
しかし、呼吸が疎かになると胎盤から送られる酸素量が低下し赤ちゃんの負担になってしまうことも。
フリースタイル出産でリラックスすることは、正常な呼吸を維持することにも繋がります。リラックスして深く呼吸することで、赤ちゃんに新鮮な酸素を送る効果が期待できます。
フリースタイル出産は、小さな体で産まれてこようとする赤ちゃんの負担を少しでも軽減するための自然なお産スタイルと言えます。
【メリット4】痛みを逃しやすい体勢で出産できる
出産で最も大切なのは、赤ちゃんが生まれるその瞬間までいきみたくなるのを我慢するということです。
陣痛の痛みがどれだけ強くとも、子宮口が開いてなければ赤ちゃんは生まれません。
上手に痛みを逃しながら、最後の最後まで体力を温存することが大切です。
フリースタイル出産では、ママが一番楽だと感じる体勢で子宮口が開ききるその瞬間まで耐えることが可能です。
楽な姿勢で痛みを逃しやすいフリースタイル出産は、痛みに弱いママや陣痛に耐えられるのか不安を感じるママにも支持されています。
【メリット5】会陰切開のリスク軽減が期待できる
出産の際にママがとっても気になる「会陰切開」。出産の際に会陰が裂けてしまわないよう、事前に切開しておく事で傷口の悪化を防ぐ処置です。
裂傷になるのは嫌だけど出来れば切開したくないというママも多いことでしょう。
出産による会陰の裂傷は必ず起きるものではありません。
産前に会陰マッサージで会陰の伸縮性を高めておいたり、時間をかけて会陰を伸ばしながらお産を進めることで裂傷を起こすことなく出産できることもあります。
ここでポイントになるのが、フリースタイル出産における「痛みを逃がしやすい体勢」という点です。
ママが陣痛による痛みを感じると思わずいきんでしまい腹圧をかけてしまいがち。
無理な腹圧で早急にお産が進むと会陰が伸び切る前に赤ちゃんの頭が出て来て会陰が裂けるリスクが高まります。
フリースタイル出産では痛みを逃しやすい体勢をとることで、いきまず赤ちゃんのペースでお産を進め会陰がしっかりと伸び切ってから出産できる場合が多いです。
会陰の伸縮性は個人差があるので、100%会陰切開が不要(裂傷にならない)という訳ではありませんが「なるべく会陰切開や裂傷を避けたい」というママは試してみる価値があります。
【メリット6】パパも出産に参加できる
大きなお腹で陣痛に耐えながら体勢を変えるのは中々大変なもの。
フリースタイル出産ではママが希望するなら、体を動かすためパパに支えてもらったり、パパに支えられた状態で出産することも可能です。
お産に必要な存在として支えてもらい、何より近くで出産を見届けてもらうことでパパも出産に参加することができます。
もしもパパが支えられない場合や、立ち合いが出来ない場合は助産師がしっかりとサポートしてくれます。
【メリット7】陣痛時に分娩台に移動する必要がない
経産婦に出産時の話を聞くと「子宮口全開の状態で分娩台に移動するのが一番大変だった」という声を聞くことがしばしばあります。
分娩台で出産をする場合、陣痛がはじまり子宮口が全開になるまで陣痛室で待機するのが一般的。
痛みがピークの状態で分娩室へと移動し、分娩台に登るのはママにとって本当に大変なことです。
フリースタイル出産では陣痛から出産まで同じ部屋で行うため、移動が必要ありません。
経産婦のママは、このメリットに惹かれるという人も多いようですね。
フリースタイル出産のデメリットはある?
フリースタイル出産のメリットについて解説しましたが「デメリットはないの?」と気になっているママもいるでしょう。
続いてフリースタイル出産において気になる点について解説します。
フリースタイル出産は誰でも可能な訳ではない
フリースタイル出産は希望したからといって誰でも可能な訳ではありません。
ママの意思を尊重することは大切ですが、あくまでママと赤ちゃんが健康であることが前提。
安全な出産に対するリスクが妊娠中から見られる場合には、医師からNGが出る場合もあります。
病院によって判断基準は異なりますが、以下のような場合はフリースタイル出産を断られることが多いようです。
- 多胎妊娠の場合
- 合併症などのリスクがある場合
- 妊娠前のBMIが25以上の場合
どんな出産でも妊娠中の体調管理は大切ですが、フリースタイル出産を希望する場合は特に気を付けておきましょう。
緊急時は分娩台での出産に切り替わることがある
出産は医師や助産師でさえ予想外の事態が起こる場合があります。
ママと赤ちゃんに危険があると判断された場合、フリースタイル出産の途中でも分娩台に移動して対応することがあります。
何より大切なのは、ママと赤ちゃん両方が健康な状態で出産すること。緊急時には医療の介入があることを頭に入れておきましょう。
産院によってはフリースタイル出産できない場合もある
フリースタイル出産は、どの産院でも取り扱っている訳ではありません。
フリースタイル出産を行うには、知見を持つ医師や助産師が在籍していることが欠かせません。
その他にもフリースタイル出産に対応できる部屋の確保や設備も必要です。
特にフリースタイル出産ではママが自由に動く際、赤ちゃんの心拍数をモニタリングする機器の取り付けが難しいという事から取り扱っていない産院も多いようです。
現在ではコードレスのモニタリング機器があるので、そういった設備をもつ産院がフリースタイル出産を行っています。
当院ではフリースタイル出産を推奨しておりますので、フリースタイルでの出産をご希望の方やもっと詳しくお話を聞きたい方はご連絡くださいね。
フリースタイル出産の分娩費用
フリースタイル出産は、通常分娩と同じ扱いで費用請求を行う産院が多い傾向にあります。
ただし、産院によっては人員の確保や設備の確保のためにフリースタイル出産を行う際追加料金を請求される場合も。事前にキチンと確認しておくと良いでしょう。
※当院ではフリースタイル出産における追加請求などはございません
フリースタイル出産をする際の体勢
フリースタイル出産が初めてのママは、自由なお産と言われても想像し難いかもしれません。
フリースタイル出産でよくある体勢や産み方について紹介します。
横向き
畳や布団の上で寝そべり、横向きになって出産するママはとても多いです。
妊婦がリラックスできるとして有名な「シムズの体勢」でもお馴染みですね。
左側を下にして横たわり、左足は伸ばし右足を曲げることで力が抜けやすくリラックスできるといわれる体勢です。
お腹の大きなママは、子宮の重みから開放される点でもおすすめ。
リラックスしやすいので、会陰がゆっくりと伸びて傷ができにくい体勢とも言われています。
分娩時は、医療スタッフが片足を持ち上げた状態で赤ちゃんを取り上げるので、パパにその役目を担ってもらうことも可能。
パパにもしっかり出産に参加して欲しいというママはお願いしてみても良いかもしれませんね。
四つ這い
四つ這いの状態や、胸の下にクッションを置いて寄りかかるような体勢で出産することもできます。
横向きと同じく子宮の重みから開放されるので特に妊娠中から腰痛が辛いというママにおすすめです。
パパや椅子に掴まって上半身を起こすことで、重力に従って赤ちゃんが降りて来やすくなるとも言われています。お産を進めたい時におすすめの体勢です。
【フリースタイル出産を希望するママ向け】妊娠期間の過ごし方
フリースタイル出産を希望するママは、妊娠期間から特に以下のような点に気を付けながら過ごすと良いでしょう。
安定期以降の過ごし方
安定期以降は体重の急増に注意しましょう。急激な体重増加は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症のリスクを高めます。
その他、ウォーキングなどの有酸素運動を適度に取り入れて体力をつけ、妊婦体操やマタニティヨガで柔軟性を高めておくのがおすすめです。
何よりパパや家族と「産み方」についての話し合いをしておくことが大切。
パパや他の家族に理解を求められるよう、フリースタイル出産とはどういうものなのか?どんなメリットがあるのかをよく説明してあげると良いでしょう。
また、パパに立ち会って欲しいママは、その旨を伝えておくとパパも心の準備ができるのではないでしょうか。
臨月以降の過ごし方
臨月を迎えたら、会陰マッサージや乳首マッサージなど出産に備えたボディケアもはじめましょう。
呼吸法を再確認し、実際に練習することも大切です。
バースプランをよく考え、ママ自身がどのようなお産をしたいのかをイメージしてみると良いでしょう。
パパにもバースプランの内容を共有しておくことで、陣痛で焦ってしまってもイメージしたお産を進められるようサポートしてもらえます。
産む場所を決めたら「産み方」も考えてみよう
産む場所についてはよく考えても、産み方については深く考えたことがないというママは少なくありません。
フリースタイル出産という1つの選択肢を踏まえて、「どんな出産をしたいか」「どのように赤ちゃんを迎えたいか」ということを考えてみてはいかがでしょうか。
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