妊娠中のママが気になる体重増加。増え過ぎると産院で指導を受けてしまう、という話を聞いたことのあるママも多いでしょう。
妊娠中のママは、赤ちゃんの発育をサポートするためにも適正体重を維持しながら妊婦生活を過ごすことを意識するのが大切です。
この記事では太り過ぎ・痩せ過ぎで起こる妊娠中や産後のトラブルをはじめ、妊婦の適正体重や体重管理のコツについても紹介しています。
過去の妊娠・出産で体重に関する指導を受けたママや、今後妊娠を希望している人も是非参考にしてみて下さい。
妊娠中の体重増加の内訳
妊娠すると母体のなかで赤ちゃんが育ちます。羊水や胎盤など、赤ちゃんが発育するために必要不可欠な組織も形成されるため、ママの体重が増えるのは当然と言えるでしょう。
一般的に妊娠によって増える体重の内訳は以下のとおりです。
- 赤ちゃんの体重 約3kg
- 胎盤 約0.5kg
- 羊水 約0.5kg
- 妊娠によって母体に増える血液や水分 約2kg
- 妊娠によって母体に増える皮下脂肪 約2~3kg
上記のとおり、一般的には妊娠すると8kg程度体重が増加すると言われております。また、妊娠中はホルモンの影響により皮下脂肪がつきやすくなります。そのため、ママの体に約2~3kg程度の皮下脂肪が増えるのも一般的と言える数値です。
妊娠前の体重にもよりますが、妊娠中は5~15kgの体重増加が一般的と言えます。
妊娠中の適切な体重増加を計算する方法
妊娠中は、妊娠前のママの体型によって推奨される適正体重というものがあります。
適正体重は、妊娠から出産までの期間中「体重増加をこれ位にできるよう管理しましょう」という指針です。
1990年頃まで妊婦の太り過ぎが問題視されていたことから、近年は「太り過ぎてはいけない」という指導を行う産婦人科医が多くいました。
しかし、近年ではやせ型のママや標準体型のママに対しては「これまでより体重を増やして構わない」として、痩せすぎない指導も行われています。
BMI値(体格指標)とは
妊娠中の適切な体重増加量は、妊娠前の体重にも影響を受けます。そこで指標とすべきなのがBMI値です。
BMIとは、身長と体重を元に体格を判定するための指標です。BMI値を計測することで、自分自身がやせ型なのか太り過ぎなのかが分かります。
妊娠中の体重増加についても、妊娠前のBMI値を元に適切な体重増加量を把握しておくことが重要視されています。
BMI値の計算方法
BMI値は以下の計算式で表すことができます。
BMI値からみる妊娠中の体重増加量の目安
BMI値による妊娠中の体重増加に関する指導は古くから行われていましたが、低体重児出産の増加に伴い2021年3月には、妊婦の適正体重に対する指標も見直されることになりました。
BMIと適正体重の指標
妊娠前のBMI | 【改正後】妊娠中の適正体重 | 【改正以前】妊娠中の適正体重 |
BMI18.5未満 | 12~15kg | 9~12kg |
BMI18.5以上25未満 | 10~13kg | 7~12kg |
BMI25以上30未満 | 7~10kg | 個別対応 |
BMI30以上 | 個別対応 | – |
50kg÷(1.6m×1.6m)=19.5●妊娠中の適正体重
上記の表より、妊娠中の適正体重は「+10~13kg」。
体重が50kgなので、妊娠から出産まで全体を通して「60~63kgまでの体重増加が適正」。
適正体重はあくまで妊娠期間全体を通して、適正とされる体重の指標です。
短期間で急激に適正体重まで達してしまうのは良くないので、体重の増やし方にも十分注意してみて下さい。
参考:こども家庭庁 | 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要領
妊娠中に太り過ぎる場合のデメリット
経産婦ママの中には、妊娠中に太り過ぎてしまい医師から指導を受けたという人も少なくないでしょう。
妊娠中は、ママの胎内で成長する赤ちゃんに十分な栄養を送るため、ある程度の体重増加が必要不可欠です。
しかし、過剰に太り過ぎてしまうと妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病をはじめとしたさまざまなトラブルを引き起こすリスクになります。
妊娠中のママは太りやすい体質になるため、通常以上の体重増加は当然あるでしょう。
しかし、ママや赤ちゃんに異常が現れる程の体重増加は防ぐ必要があります。
妊娠中に太り過ぎてしまうことで起こる病気やトラブルについて紹介します。
妊娠高血圧症候群になりやすくなる
妊娠中の急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群にかかるリスクを上昇させると言われています。
妊娠高血圧症候群は、妊娠中に起こる高血圧です。
高血圧が引き金となりさまざまな病気や疾患を引き起こし、ママだけでなく赤ちゃんに影響が出るケースも少なくありません。
妊娠高血圧症候群が重症化すると胎盤の機能が低下してしまうこともあり、胎児発育不全や常位胎盤早期剥離、胎児死亡など赤ちゃんの命に関わる症状を引き起こすこともあります。
妊娠高血圧症候群についてもっと詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてみて下さい。
妊娠糖尿病になりやすくなる
妊娠中に血糖異常を起こしてしまう妊娠糖尿病も、急激な体重増加が発症リスクになることが分かっています。
妊娠糖尿病も、ママだけでなく赤ちゃんに影響を与えてしまうリスクが大きく、子宮内胎児死亡や新生児低血糖、先天奇形、発育遅延を起こす可能性があります。
妊娠糖尿病になると、赤ちゃんが必要以上に大きく育ってしまう巨大児となるリスクも心配ですね。
巨大児は多くの脂肪を蓄えているものの、内臓の発達が未熟な状態になりやすく、肩甲難産(赤ちゃんの肩が引っかかって分娩が難しくなる)になるケースもあります。
妊娠糖尿病についてもっと詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてみて下さい。
腰痛を起こす可能性がある
妊娠中は骨盤が緩みやすく、腰回りの筋肉も弱ってしまいやすくなります。そのため、お腹が大きくなっていくのに伴い腰に負担がかかり腰痛を起こすこともあるでしょう。
過度に体重が増えてしまった場合、より腰痛は起こりやすくなります。中には、座るのも立つのも負担になる程の酷い腰痛を引き起こすケースもあり、痛みから運動を控えるようになり余計に体重増加で腰痛が悪化してしまう人も少なくありません。
出産が長引く可能性がある
過度に体重が増加し子宮や産道付近に脂肪が多くついてしまうと出産がスムーズに進まなくなってしまう可能性があります。
子宮や産道が脂肪で圧迫されることで、陣痛がうまく付かず出産には直結しない微弱陣痛が長引いてしまうケースも少なくありません。
また、産道に脂肪がつくことで赤ちゃんが通るスペースがなくなり、分娩に支障をきたすこともあるでしょう。
産後の回復が遅くなる
過度な体重増加により出産が長引いてしまうと、ママの体は疲弊してしまいます。そのため、産後の回復が遅くなってしまう可能性もあるでしょう。
また、体重増加によって妊娠高血圧症や妊娠糖尿病を発症した場合、産後にも高血圧や糖尿病などが慢性化してしまう可能性もあります。
妊娠中に痩せてしまう場合のデメリット
妊娠中は太り過ぎることが問題視されがちですが、最近は痩せ過ぎているママのトラブルも注目されています。
特に妊娠する前から痩せているママは、妊娠中さらに痩せてしまうことでさまざまな問題が生じてしまいます。
赤ちゃんが将来生活習慣病になりやすくなる
妊娠前からやせ型のママの場合、栄養状態が芳しくないケースも珍しくありません。
妊娠中、胎盤が完成した後はママの補給した栄養が赤ちゃんへ送られるため、ママが栄養不足になっていると当然赤ちゃんにも十分な栄養が行き届かなくなってしまいます。
最近の研究によると、胎児の時に十分な栄養が摂れず飢餓状態になった赤ちゃんは、出生後の飢餓状態に備えて脂肪を栄養分に変えやすいよう遺伝子を変化させることが分かっています。
つまり、少しの食糧からでもできる限り多くの脂肪分や栄養分を体内に取り込むことのできる体質になるということです。
現代の日本で飢餓状態に陥ることは殆どないため、出生後十分な栄養を摂取した赤ちゃんは必要以上に栄養や脂肪を溜め込みます。
結果、やせ型のママから産まれた人は、将来早い段階で生活習慣病などにかかりやすくなってしまうリスクがあると言われています。
赤ちゃんが低体重児で産まれやすくなる
低体重児とは2,500g未満で産まれてくる赤ちゃんのことを言います。
低体重児として産まれた人は将来的に、統合失調症や慢性呼吸器症候群、骨粗鬆症などのリスクが高く、女性の場合妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を引き起こしやすいことが分かっています。
また、低体重児として生まれた女性は低体重児を出産しやすい傾向にあることも、近年の研究により分かってきました。
日本は特に低体重児の出生率が高く、先進国の中でも特に多いことが問題となっています。
日本で出生している新生児の10人に1人が低体重児と言う背景には、元々やせ型のママが妊娠を経てさらに痩せてしまうことが要因の1つと考えられています。
妊娠中に体重が増減しやすい6つのタイミング
妊娠中は、時期によって体重が増減しやすいタイミングがあります。それぞれのタイミングを理解しておくことで、時期に合った体重管理を心掛けましょう。
その1.つわり中のタイミング
妊娠初期などに起こりやすいつわり。常に食べ物を食べていないと吐き気のする食べつわりや、食べ物を受け付けない吐きつわりなど症状はさまざまです。
つわりの時期は最も体重が増減しやすいタイミングです。
基本的に、食事を摂れるタイプのつわりの場合は栄養バランスの摂れた食生活を心がけて対処しましょう。食べつわりの場合は間食に低カロリーのものを選ぶなどの工夫も大切です。
一方、食べ物を受け付けないタイプのつわりの場合は、食べられる物だけを食べても大丈夫です。最も危険なのは、食べ物を摂れずに栄養が不足してしまうことなので、高カロリーなものでも遠慮なく食べておく方がよいでしょう。
吐きつわりの場合、つわりが治まってから体重管理を行っても問題ありません。
その2.つわりが終わったタイミング
つわりが終わったタイミングは、全てのママが注意すべき時期です。これまで、大なり小なり吐き気に襲われていたつわりから開放され、いつもの食事がとても美味しく感じる時期と言えます。
つわりが終わった開放感や妊娠中期に入り妊婦生活にも慣れてきたことで、ハメを外してしまうママも少なくありません。
つわりが終わった時期は、食べ過ぎてしまい体重が一気に増加しやすいタイミングと言えます。
その3.自宅安静などの指示が出たタイミング
切迫早産や切迫流産など、赤ちゃんやママの状態によっては自宅安静の指示が出ることもあります。入院して安静にする場合、カロリー計算のされた病院食が提供されるためそれほど心配はありませんが、自宅安静の場合は要注意です。
赤ちゃんに対する心配や不安がストレスになって過食してしまうケースも少なくありません。また、自宅でベッドに入ったまま過ごしていると、暇を持て余してついつい間食をしてしまいがちです。
その4.産休に入ったタイミング
働いているママの場合、産休に入るタイミングにも注意しましょう。産休に入ることで生活リズムが崩れ、間食が多くなってしまうケースも少なくありません。
また、産休に入ったから「赤ちゃんが生まれる前に友人と会っておこう」など、外食が増えることも多いです。
その5.里帰りしたタイミング
里帰り出産を予定しているママの場合、里帰りのタイミングにも注意が必要です。実家に帰ることでこれまでよりも家事をすることが少なくなったり、実家の食事が美味しくて食べ過ぎてしまうケースが多く聞かれます。
また、里帰りしているからと故郷の友人と外食する機会も増えるでしょう。意識的に家事や運動、カロリーセーブするなど体重管理を行う意識を持つ必要があります。
その6.臨月に入ったタイミング
臨月に入ると赤ちゃんは毎日毎日大きくなっていきます。そのため、妊娠期間中もっとも体重が増えやすい時期と言ってもよいでしょう。
一方で、大きなお腹を支えながら動くのが億劫になり、家事や軽い運動などを控えてしまうママも少なくありません。赤ちゃんの体重が増える分には問題ありませんが、ママが脂肪を蓄え過ぎてしまわないよう、意識的に動くことも大切です。
妊娠中の体重管理をするポイント
妊娠中は肉体的にも精神的にもさまざまな変化が目まぐるしく起こるため、気が付いた時には過度に体重が増えてしまったと驚く人も少なくありません。
そこでおすすめなのが、毎日体重管理を習慣化させることです。
妊娠中の体重管理を行うためのコツを紹介します。
毎日体重を計測する
毎日体重を計測することを習慣化しましょう。可能であれば、毎日同じ時間に計測するよう心掛けると習慣化しやすくなりますよ。
一番良いのは朝起きた時の体重を毎日計測することです。トイレの近くに体重計を置いておいて、朝トイレに行ったら体重を計るなど、続けられる工夫をしてみましょう。
食べた物を記録する
もともとBMI値が高く体重増加を最小限に抑えたい場合には、食べたものを記録するのがおすすめです。体重管理アプリなどを利用すれば、簡単に記録ができます。
1週間に1度食生活を見直すようにし、間食が多い場合やカロリーの高い食生活が続いている場合は、翌週の摂取量を控えるなど調整をしていきましょう。
適度な家事や運動を継続する
妊娠したからといって、これまで行っていた家事や運動を全て控えなければいけない訳ではありません。適度に体を動かすことは健康に妊娠生活を過ごすために必要です。
赤ちゃんの安全やママの健康を考え、適切な範囲で家事や運動を取り入れましょう。
妊娠中に体重管理をする際の注意点
妊娠中に体重管理をしていても、理想通りにコントロールするのは難しいでしょう。太ってしまったり痩せてしまったりするケースも少なくありません。
しかし、だからといって体重に固執してしまうとママや赤ちゃんの健康を害してしまいます。体重管理が上手くできない時でも、以下の点に注意してください。
ダイエットは禁物
妊娠中の体重管理をするなかで、もっとも危険なのがダイエットです。食事制限や過度な運動など、やり方によってはママや赤ちゃんに大きな影響が出てしまうものもあります。
もし太ってしまった場合にも、原則として「栄養バランスの良いカロリーを控え目にした食事」で対処するのが望ましいでしょう。
運動についても、医師とよく相談して健康に影響の出ない範囲で取り入れることが大切です。
塩分を控える
体重管理が上手くいかない人の多くに、塩分過多な食生活がみられます。
塩分を過剰に摂取してしまうと、体内の塩分濃度を薄めるために水分を過剰に蓄えてしまいます。水分の過剰摂取により、体重が増えむくみなどの症状も出てしまうケースが多いです。また、塩分の摂り過ぎは高血圧などの原因にもなり、妊娠高血圧のリスクも上昇します。
出汁をきかせて塩分を控え目にするなど、妊娠中は特に塩分の摂り過ぎに注意しましょう。
痩せすぎてしまうママが体重管理をするコツ
やせ型のママは、元々食が細い人も少なくありません。
つわりで食事が喉を通らず、妊娠前よりさらに痩せてしまうとお腹の赤ちゃんが心配になってしまいますよね。
体重を増やしたいママは、1日の食事を小分けにして5食にしてみるのがおすすめです。
妊娠中は大きくなる子宮に他の臓器が圧迫されて、胃が押し上げられてしまいます。
少し食べると満腹感を感じてしまうのは、このためです。
食事は栄養バランスの摂れたものを1日トータルで摂り入れることを意識してみて下さい。小まめに食事をしてでも、1日に必要なカロリーや栄養素を摂取できればOKです。
仕事をしていて、小まめに食事をするのが難しいママはスムージやおにぎりなどを間食としてみる方法もおすすめです。
体重を増やそうと高カロリー、高脂質なものばかりを食べてしまうと、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病のリスクが高まるため危険です。
やせ型で体重の増えにくいママは妊娠中期以降1週間に0.3kg以上の体重増加を目指してみましょう。
どうしても食事が摂れない場合には、サプリの服用も検討する必要があります。
その際は、自己判断せず、妊婦検診で医師や栄養士に相談してみて下さいね。
まとめ
妊娠中の体重管理は、ママや赤ちゃんの健康にとても大切なものです。
妊娠前の体型を元に、適正体重に合わせた体重管理が重要です。
お腹の赤ちゃんの成長にはママが摂り入れる栄養がかかせません。
妊娠中はこれまで以上に栄養バランスに気を付けた食事を摂り入れ、暴飲暴食や無理なダイエットを控え、健康状態を維持できるよう心掛けてみて下さい。
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