初めて新しい命をお腹に宿したママから心配事として挙げられるのがお金のことです。特に出産にかかる費用が、どれ位なのか気にかかっているケースも少なくありません。
「出産までにどれ位のお金を用意しておけば良い?」
「金銭的に苦しいんだけど行政で補助は受けられない?」
この記事では、そんな不安を抱えるママの疑問にお答えします。出産を控える人は勿論、これから赤ちゃんを迎えたいと考えている人も是非参考にしてみて下さい。
出産費用の全国平均
出産の際にかかる費用について厚生労働省が調べた所、以下の結果が出ました。
全国平均 | 482,294円 |
公的病院の平均 | 463,450円 |
私的病院の平均 | 506,264円 |
診療所・助産院の平均 | 478,509円 |
引用:厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果について
また、令和2年度のデータから都道府県別の出産費用平均を算出した調査結果によると、最も費用が高いのは東京都の553,021円、最も費用が低いのは佐賀県の351,774円です。約20万円近く差があることに驚く人も多いのではないでしょうか。
出産費用は、公的病院、私的病院などの医療機関の違いだけでなく、地域ごとの差も大きく見られます。
出産費用の自己負担額の平均
出産費用は、基本的に自由診療であり医療介入を必要としない限り保険適用外の扱いとなります。しかし、日本では安全に出産を迎えるために、さまざまな助成制度があるため全てを自己負担しなければいけない訳ではありません。
そうなると気になるのは「自己負担はどれ位の金額になるんだろう?」という疑問ですよね。
前項の「出産費用の全国平均」で紹介したように、出産する医療機関や住んでいる地域によっても異なりますが、全国的に見て出産に際する自己負担金は10~20万円台だったという方が多いです。
出産にまつわる費用は分娩・入院費用だけではありません。
●出産にまつわる費用の例
- 妊婦検診費用
- マタニティグッズ
- 入院準備品
- 分娩、入院費用
- ベビーグッズ
上の子がいるため、マタニティグッズやベビーグッズを用意する必要がなかったというケースや、初めての子どものため全て用意する必要があったケースなど、家族構成によっても自己負担金額は変わってくるでしょう。
その他、無痛分娩のような医療介助を必要とする分娩を希望する場合にも、自己負担金額は大きくなります。
【妊娠週数別】妊婦検診にかかる費用
妊娠や出産にかかる費用は一括で全てが必要な訳ではありません。妊娠週数によっても、かかる費用が異なります。
続いては、妊娠週数別にかかる費用についてみていきましょう。
妊娠初期(妊娠発覚~13週6日まで)にかかる費用
妊娠初期にかかる費用の目安として以下のものが挙げられます。
- 初診費用 1~1.5万円
- 妊婦検診費用(おおよそ1回)1,000~3,000円
妊娠の可能性を感じて産婦人科を受診する場合、初回検診は全額自己負担になります。医療機関によっても差がありますが、妊娠検査を含む初回受診の際の相場は1~1.5万円と言われています。
妊娠が確定し母子手帳を発行してもらうと、同時に妊婦検診の補助券を受け取ることができます。基本的に23週までの妊婦検診の頻度は4週間に1回とされているため、妊娠初期に受ける妊婦検診は異常がない場合、おおよそ1回である事が多いでしょう。
補助券を使うと1,000~3,000円の自己負担額で妊婦検診を受けることができます。
妊娠中期(14週0日~27週6日まで)にかかる費用
妊娠中期にかかる費用の目安として以下のものが挙げられます。
- 妊娠検査費用(おおよそ4回)1,000~3,000円×4 4,000~1.2万円
- マタニティウェア 1~3万円
- 戌の日詣り 3,000~1万円
23週まで4週に1回だった妊婦検診は23週以降2週間に1回の頻度になります。妊娠の経過に異常がない場合、妊娠中期はおおよそ4回受診することになるでしょう。
その他、段々とお腹が大きくなってこれまで着ていた下着や服を窮屈に感じるようになります。こういった理由から妊娠中期にマタニティウェアを購入する人が多いです。タイツや下着だけ用意する人もいれば、マタニティ用の洋服などを購入する人もいるため、マタニティウェアの費用については個人差があります。
安産祈願をしたい人の場合、妊娠5ヶ月を過ぎてから行う「戌の日詣り」でも費用が必要なので知っておきましょう。戌の日詣りでは初穂料として3,000~1万円をお供えします。神社の格式などによっても初穂料は異なるため、分からない場合には「皆さん初穂料はどの位の金額をお供えされるんでしょうか?」と神社の人に尋ねてみるのもよいでしょう。
妊娠後期(28週0日~出産まで)にかかる費用
妊娠後期にかかる費用の目安として以下のものが挙げられます。
- 妊娠検査費用(およそ9回)32週まで1,000~3,000×3 3,000~9,000円
32週以降3,000~5,000円×6 1.8~3万円 - ベビーグッズ 5~10万円
32週までは2週間に1回の頻度で行われる妊婦検診ですが、32週以降は出産まで1週間に1回の頻度で検診が行われます。検診内容もNST(ノンストレステスト)などが行われるようになることから、自己負担する費用も多少増えることが多いです。
また、妊娠後期にベビーグッズを買いそろえる人も多く、一式揃える場合は約10万円を予算としておくとよいでしょう。兄妹がいる場合や知人などから譲ってもらえる場合は、費用を抑えることもできます。
分娩・入院にかかる費用
赤ちゃんを分娩し、その後入院している間にかかる費用が出産費用です。
公益社団法人国民健康保険中央会の調査によると、自然分娩の場合にかかる出産費用の平均は50万5,759円。細かい内訳は以下になります。
自然分娩の場合にかかる出産費用の内訳(※1)
項目 | 詳細 | 平均値 |
---|---|---|
入院日数 |
産後から退院までの日数
|
6日間
|
入院料 |
部屋代、ベッド代、食事代を含む
|
11万2,726円
|
室料差額 |
個室などを指定した場合に発生する部屋代との差額
|
1万6,580円
|
分娩料 |
自然分娩にかかる費用
|
25万4,180円
|
新生児管理保育料 |
入院期間中赤ちゃんにかかるミルク代・オムツ代を含む管理費用
|
5万621円
|
検査・薬剤料 |
–
|
1万3,124円
|
処置・手当料 |
産後から退院までの日数
|
1万4,563円
|
産科医療保障制度 |
出産の際、赤ちゃんが重度脳性麻痺や後遺症を患ってしまった場合の経済的負担に対する保証制度。殆どの医療機関、助産院が加入している
|
1万5,881円
|
その他 |
–
|
2万8,085円
|
あくまで平均なので、ママや赤ちゃんの状態、出産する施設、出産方法などで変化することも覚えておきましょう。
※1:公益社団法人国民健康保険中央会「正常分娩の平均的な出産費用について(平成28年度)
出産費用は保険適用されないの?
基本的に、妊娠は病気ではないため健康保険の適用外となります。妊婦検診においても助成券を使いきった後の妊婦検診費用は全額自己負担です。
その他、無痛分娩や入院中に個室を希望した場合の費用等も、自己負担になるため覚えておきましょう。
一方で、妊娠悪阻や切迫流産・切迫早産などの診断を受けて妊娠中に入院が必要とされるケースや、何らかの原因で帝王切開での分娩が必要と診断された場合は、健康保険が適用されることがあります。
健康保険が適用される場合も、個室を希望した場合などの差額は自己負担になるため注意してください。
【出産費用を抑えたい人必見】妊産婦に関する7つの助成制度
妊娠・出産にはさまざまな費用が発生しますが、できる限り多くの妊婦が金銭の不安なく出産を迎えられるようさまざまな助成制度があります。
1.妊婦健康診査受診票
妊婦健康診査受診票は、妊婦検診費用を補助する目的で発行されます。母子手帳交付後に受け取ることができ、妊婦検診の際に提出すると検査費用の一部(もしくは全額)を補助してもらえる仕組みです。
妊婦健康診査受診票の発行枚数や補助金額は自治体によって異なります。
妊婦健康診査の公費負担状況の例(※3)
都道府県名 | 平均公費負担状況 |
---|---|
北海道 | 9万9,928円(※4) |
東京都 | 8万6,742円 |
大阪府 | 11万6,309円 |
福岡県 | 10万3,813円 |
沖縄県 | 9万9,215円 |
どの自治体で出産するのかによって、妊娠中の費用負担が異なることが分かりますね。妊娠が分かったら、まずはお住まいの妊婦健康診査受診票の補助率などを調べてみるのもおすすめです。
※3:厚生労働省|妊婦健康診査の公費負担の状況について(平成30年4月1日現在)
※4:公費負担状況を明示していない自治体を除いた値
2.出産育児一時金
出産育児一時金は、妊娠4ヵ月以上で健康保険に加入している(被扶養者も含む)全てのママに支給される補助金です。申請を行うと赤ちゃん1人につき50万円が支給されます。
出産育児一時金の受給方法は3つあります。
直接支払い制度
受給方法の詳細 | 出産した施設が健康保険に申請を行い、出産育児一時金を出産費用に充当してもらえる。退院までに施設の、直接支払い制度の利用について契約を交わす必要がある。 |
申請のタイミング | 出産前 |
医療機関に支払う出産費用の有無 | 出産費用が給付金を上回る場合、差額を支払う |
ポイント |
|
受取代理人制度
受給方法の詳細 | 出産した施設が、出産育児一時金を代理受給して出産費用に充当してもらえる。事前に健康保険に受け取り代理人制度利用の申請書を提出する必要がある。 |
申請のタイミング | 出産前 |
医療機関に支払う出産費用の有無 | 出産費用が給付金を上回る場合、差額を支払う |
ポイント |
|
受取代理人制度
受給方法の詳細 | 出産後、自分自身で健康保険に出産育児一時金の受給申請を行う |
申請のタイミング | 出産後 |
医療機関に支払う出産費用の有無 | 出産費用を全額支払う |
ポイント |
|
多胎児の場合は、人数分の給付金が支払われることや、産科医療保障制度に未加入の施設で出産した場合は支給額48万8,000円になるといった規定もあります。
出産育児一時金について詳細を知りたい場合は、全国健康保険協会のホームページなどを参考にしてみて下さい。
3.出産貸付制度
出産する医療機関で直接支払制度や受取代理制度を扱っていない場合、分娩・入院費用を一括で支払わなければならない場合があります。(この場合、出産育児一時金は後日受け取ることになります)
しかし、約50万円の現金を一括で支払うのが難しいというケースも少なくありません。そういったケースでは健康保険協会による出産費貸付制度の利用を検討するのがよいでしょう。
出産費貸付制度では、出産育児一時金が支給されるまでの間、無利子で出産育児一時金支給見込み額の8割相当額までを借り受けることができます。
貸付金額は1万円単位で指定することもできるため、出産育児一時金が給付されるまでの間、必要額を借り受けることもできます。
参考:協会けんぽ|出産費貸付制度
4.出産手当金
出産手当金は、就労していて勤務先の健康保険に加入しているママを対象にした補助制度。パートやアルバイトの場合でも、勤務先の健康保険に加入していれば受け取り可能です。
標準報酬月額(過去12ヵ月の平均給与)を基準にして、日給の2/3相当の手当金を98日分(産前42日、産後56日)受け取れます。出産が予定日から遅れた分も加算して受け取り可能です。また、多胎児を妊娠している場合は154日分(産前98日、産後56日)を受給できることも覚えておきましょう。
25万円÷30日=8,333円(日給)
日給8,333×2/3=5,555円(1日当たりの受給額)
5,555×98日分=54万4,390円(出産手当金の総額※予定日通りに出産した場合)
ただし、出産手当金は産後56日経過後に申請し、受給まで1~2カ月かかるケースが多いです。出産費用には充てられないことが多いので注意しましょう。
原則としては産後も仕事を続けることが前提ですが、妊娠中の体調不良によって退職を余儀なくされた場合などでも出産手当金を受け取れるケースがあります。
その際、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があることや、退職時(健康保険の資格喪失時)に出産手当金の受給条件を満たしている必要があります。
働いているママは、妊娠が分かったら加入している健康保険の出産手当金について調べてみましょう。
5.高度療養費制度
出産時に医療の介入が必要となったママの場合、高度療養費制度を利用できるケースがあります。
健康保険では、1ヵ月にかかった医療費の支払いに上限額が設定されています。上限額を超えた費用は健康保険からの補助を受けられるため、満額を支払う必要がなくなります。これが高度療養費制度です。上限額は、加入者の年齢や年収によって決められます。
帝王切開のママに適用されることが多いので、妊娠中から帝王切開が予定されているママはチェックしておきましょう。詳しくはこちらの記事で紹介しています。
6.傷病手当金
妊娠中に重度のつわり、切迫流産、切迫早産などで休職を余儀なくされたママの場合、傷病手当金を受けられる場合があります。
ただし、休職中にも給与が発生している場合や、出産手当金を受給する場合は傷病手当の受給を受けられないなどの規定もあるため注意しましょう。
また、加入している公的医療保険によっては、傷病手当金制度を設けていない場合があります。
7.国民・厚生年金保険料の産前産後免除制度
産前産後は国民年金保険料の支払を免除される制度もあります。
国民年金の場合
国民年金において1号被保険者が出産する場合、出産予定日が属する月の前月から4カ月間は年金保険料の納付が免除されます。(多胎妊娠の場合は、出産日が属する月の3ヶ月前から6カ月間)
国民年金の産前産後免除制度は、出産予定日の6ヶ月前から住まいの市町村役場で申請手続きができます。
参考:日本年金機構|国民年金保険料の産前産後期間の免除制度
厚生年金の場合
厚生年金保険に加入している人が出産する場合にも、保険料の納付が免除される制度があります。厚生年金保険の場合は、産前42日、産後56日のうち、出産が理由で休業している期間が免除対象となります。
厚生年金の場合、産前産後免除の期間は国民年金の免除期間に比べると短いです。しかし、育児休業期間中にも厚生年金保険料の納付が免除されるため、育児休暇の取得を検討している場合は、長期間において免除を受けられます。
手続きは勤めている企業から産前産後休業取得申出書を日本年金機構に提出する必要があるため、企業に手続きを依頼しましょう。
参考:日本年金機構|厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)
出産費用の一部は医療費控除の対象になる
出産は保険が適用されませんが、出産にかかった費用は確定申告することで免税を受けられます。確定申告で利用するため、妊娠中から領収書は残しておくように習慣付けましょう。
控除対象の例 | 妊婦検診の費用、出産費用の一部、通院や入退院にかかった交通費(公共交通機関やタクシーの費用)、産後1ヶ月検診費用、治療目的の母乳外来受診費用、不妊治療費用など |
公共交通機関の利用料金等、領収書が発行されないものに関しては家計簿などで記録しておくことで確定申告できます。
エナレディースクリニックの入院費用
特別室は個室代が別途かかりますので大体の目安になりますが、当院で出産したときの費用になります。
入院日数 | 費用 | |
---|---|---|
初産婦 |
産後5日間程度
|
48万円~
|
経産婦 |
産後4日間程度
|
46万円~
|
帝王切開 |
初産・経産いずれの方も7日間
|
43万円~(所得区分によって異なります)
|
上記金額から一時金(42万円)を引いた金額が退院時支払う費用となりますが、詳細はお問い合わせくださいませ。
まとめ
出産にかかるお金や補助制度について詳しく解説してきました。生活していく上でお金は大切なものです。お金の目途がつかないと何かと不安を感じてしまいますよね。
妊娠や出産にかかる費用や補助制度を事前に把握しておき、心穏やかに出産までの期間を過ごして下さいね。
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