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会陰切開は必要?傷や痛みは?保険適用になるの?気になる疑問を解説!

医療法人みらいグループ
会陰切開は必要?傷や痛みは?保険適用になるの?気になる疑問を解説!

出産が近くなると「どんな風に分娩するんだろう?」と、インターネットや書籍などで調べることも多いでしょう。そんな中で知る「会陰切開」という処置。出産の際に必ず行う処置なのか?どんな風に処置するのか?痛いのか?など、これから出産を控える方にとっては、不安や疑問も少なくありません。

この記事では、会陰切開について処置の内容や必要性、痛みの有無などを徹底解説します。これから出産に挑む人は、不安を解消するためにも会陰切開がどのような処置なのか知っておきましょう。

会陰切開(えいんせっかい)とは

会陰とは、膣と肛門の間の皮膚を言います。長さは約3~5cmで、伸縮性の高さが特徴です。

膣の内部には非常に多くのひだがあります。ひだが伸びきることで、直径約10cmの赤ちゃんの頭部が産道を通れるようになります。

会陰は赤ちゃんの頭部を排出する際に薄く引き伸ばされますが、伸びが悪ければ皮膚が裂けてしまうこともあります。
この裂傷を避けるために行われるのが会陰切開です。会陰に切り口を入れて予め出口を広げておくことで、裂傷の防止やお産をスムーズに進めることができます。

会陰切開の必要性

会陰切開の必要性
ここで「会陰切開をしなければ赤ちゃんは産めないの?」と疑問を抱く人も多いでしょう。

結論からいうと、会陰切開をしなくても赤ちゃんは生まれます。

世界で初めて会陰切開が行われたのは1742年という記録が残っています。アイルランドで難産の女性の分娩を進行させるために行われました。それ以前は、会陰切開をせずに分娩するのが一般的だったのです。

会陰は約5倍まで伸びると言われています。これにより膣は約25cm前後まで広がります。しかし、赤ちゃんの頭位は平均33.5cmです。そのため、女性の会陰が裂けてしまうことも少なくありません。
会陰が裂けてしまうことを会陰裂傷と言いますが、軽度の会陰裂傷であれば傷の治りは早く自然に起こることなので特に大きな問題はありません。

しかし、会陰の伸びが悪い場合や赤ちゃんの頭が大きい場合、重度の会陰裂傷を引き起こしてしまう可能性があります。重度の会陰裂傷になると尿道や肛門まで裂けてしまい、傷の治りも遅く産後のママの体にとって大きな負担となるでしょう。

会陰切開は重度の会陰裂傷を防ぐために必要な処置でもあります。

会陰切開を行う3つのケース

会陰切開は以下の3つのケースで医師の判断によって行われます。

1.重度の会陰裂傷になりそうな場合

会陰の伸びが悪い場合や赤ちゃんの頭部が大きい場合など、重度の会陰裂傷が予想される場合に会陰切開を行うことがあります。

2.早めに分娩を進める場合

分娩が長引くと赤ちゃんの体力が消耗してお産が進みにくくなってしまったり、途中で赤ちゃんの心音に異常が出てきたりすることがあります。
こういったケースでは、速やかな分娩が求められ吸引分娩や鉗子分娩といった医療措置を行うのが一般的です。

吸引分娩や鉗子分娩の際には、自然に会陰が伸びるのを待っている時間がありません。そこで、重度の会陰裂傷を防ぎ分娩をスムーズに進めるために会陰切開を行います。

3.赤ちゃんの頭部への圧迫を減らしたい場合

赤ちゃんの推定体重が2,500gに満たない低体重児の場合や、頭蓋内疾患が見られる場合でも母体や赤ちゃんの状態によっては経腟分娩を行うことがあります。

その際、標準よりも小さかったり疾患を持っていたりする赤ちゃんの負担を減らし、頭部を強い圧迫から守るために会陰切開を行うことがあります。

会陰切開は保険適用外

会陰切開では「切開」という言葉を使うため、手術のようなものを想像する人もいるでしょう。「手術なら保険が効くのではないか?」という疑問を持つ人も少なくありません。

標準的な出産において、会陰切開は医療ではなく介助措置とされます。そのため、切開をしていても手術とは見なされず保険適用にならないことが多いです。

ただし、吸引分娩や鉗子分娩など異常分娩に必要な処置として行われる会陰切開に関しては、医療措置として保険が適用されることもあります。

会陰切開の流れ

続いては、分娩の際に会陰切開がどのような流れで行われるのかについて紹介していきます。

会陰切開のタイミング

会陰切開を行うタイミングは、助産師が判断することが多いです。会陰が現在どの位伸びているのか、そしてこれ以上伸びるのか、もう伸びないのかを判断します。伸びが悪いと感じた時やこれ以上伸びないと判断されたタイミングで会陰切開を行うことが多いでしょう。

処置自体は医師が行いますが、陣痛の段階からお産に付き添うのは助産師であることがほとんどです。そのため、助産師が医師に状態を伝えて処置を行うのが一般的と言えます。

局部麻酔をする

会陰切開を行う際には、局部麻酔をします。ただし、急速にお産が進んでいる場合など緊急性の高い場合には無麻酔で行うことも珍しくありません。

局部麻酔の注射の痛みや無麻酔での切開に不安を感じる人も多いでしょう。しかし、陣痛の痛みがピークに近い状態で会陰切開を行うケースが多いため、心配している程痛みは感じにくいという意見が多く聞かれます。

会陰切開をする

局部麻酔が効いてきたら会陰切開を行います。会陰切開は小さなハサミ状の器具を使って行います。
今後の分娩の予測や会陰の伸び具合に基づいて医師が切開する場所を決めて、2~3cmほどを切るのが一般的です。

分娩後に縫合する

分娩が終わった後、胎盤を排出し終わったら会陰切開した部分の縫合を行います。この時、チクチクとした痛みを感じるという人も多いです。しかし2~3cmほどの切開部分を縫合するだけなので、処置自体は約5分で終了します。

抜糸する

抜糸は退院前日や退院当日などに行うケースが多いようです。この際、痛みを感じるという人もいれば、少しチクチクしただけという人など、感じ方に大きな差が見られます。

また、体内で溶けるタイプの糸を使って縫合しているため、抜糸をしないというケースもあります。

会陰切開後に注意するポイント

会陰切開を行った後は、傷口を清潔に保つようにケアを行いましょう。
分娩後は悪露が出るため会陰部分は不衛生になりがちです。清浄綿などをつかって会陰部分の汚れを優しく拭い清潔にします。

座っている際に痛みを感じる時は、ドーナツクッションなどを使って傷口に座面が当たらないようにするのもよいでしょう。

会陰は元々伸縮性がよいため、便などをする際にいきんでも傷が開くことはほぼありません。便意は我慢しないようにしてください。

会陰切開をしない方が産後の回復が早いケースもある

会陰切開には、出産時のママや赤ちゃんの負担を減らすさまざまなメリットがあります。しかし、必ずしも会陰切開がメリットになり得る訳ではありません。

自然にしっかりと会陰が伸びれば、そもそも裂傷になることなく分娩が完了しますし、わずかな裂傷であれば会陰切開をするよりも予後は良いと言われています。

一方で、重度の会陰裂傷を引き起こしてしまうと排便に障害が出てしまうケースもあるでしょう。

できることなら会陰切開をせず、自然に分娩する方が産後の回復が早く、スムーズに育児もはじめられます。しかし、必要に応じて会陰切開をすることで、裂傷の重症化を防ぐことができます。

会陰切開をしなかった人の傾向

必要であれば会陰切開を受けるけれど「しなくてもいいならなるべくしたくない」という人が多いでしょう。会陰切開をしたくないのであれば、分娩時にしっかりと会陰が伸びて重度の会陰裂傷を引き起こさないことが重要です。

以下に当てはまる人は、会陰が伸びやすいと言われています。会陰切開をしない人の特徴を知り、会陰をしっかりと伸ばすヒントにしてみてください。

産前に会陰マッサージをしている人

臨月に入った頃から推奨される会陰マッサージ。会陰の伸縮性を高める為のマッサージを行うことで、会陰マッサージをしておくと分娩時に会陰の伸びがよく切開を必要としない場合もあります。

会陰部分への刺激はお腹が張ってしまう原因にもなる可能性があるため、会陰マッサージを行う際は医師にタイミングを相談してからにしましょう。

分娩時に助産師の指示に従えた人

分娩の際は、陣痛の痛みで必死になってしまう人が多いでしょう。しかし、痛みから逃れるために無理にいきんでしまうと、会陰裂傷を招く大きな原因となってしまいます。

助産師がいきみの指示を出すのは、会陰の伸びや赤ちゃんの出て来る向きなどをコントロールして母体のダメージを減らすためでもあります。
そのため、助産師の指示に従っていきんだり痛みを逃したりできる人は、しっかりと会陰が伸びるのを待って出産に挑めるため、会陰切開を必要としないケースがあります。

無理にいきまず、息を止めずに吐くことに集中すると、体の力が抜けリラックスすることができ、赤ちゃんにたくさん酸素を送ることができます。
お母さんがリラックスすると、産道が緩んで赤ちゃんが通りやすくなり、お母さんの身体への負担も小さくなります。

特に初産の人は未知の痛みに不安を感じる人も多いでしょうが、助産師の言葉によく耳を傾けることを意識してみてください。

会陰切開をしたくない人におすすめの会陰マッサージ

会陰切開をしたくない人は事前に会陰マッサージをして、会陰の伸縮性を高めておくのがおすすめです。

会陰マッサージの方法

会陰マッサージは以下のように行います。

  1. 手にオイルなどをつける
  2. 左右の親指を2~3cmほど挿入する
  3. ゆっくりとお尻の方向に向けて圧をかける
  4. 左右にゆっくりと広げながら圧をかける

以上を1セットとして行います。
週に2~3回、1回あたり3セットほどを目安に行うのがよいでしょう。お風呂に入った後など、体が温まっている状態で行うとより効果的です。

会陰マッサージを行う際の注意点

会陰マッサージを行う際には、手を洗って清潔な状態で行いましょう。オイルは無添加ですべりの良いものを使うのがおすすめです。

一般的に34週頃から行う人が多いようですが、ママや赤ちゃんの状態によっては正産期に入ってから行うよう指導を受けるケースも少なくありません。会陰マッサージは、必ず医師に確認をしてから行ってください。

会陰切開は痛いの?体験したママ・体験しなかったママの意見

会陰切開は痛いの?体験したママ・体験しなかったママの意見
会陰切開で処置する場所を考えるだけで、何だかゾワゾワしてしまうという人も多いでしょう。痛くないのかな、と不安を抱える人が多いのも納得です。

実際に会陰切開を体験したママの意見には以下のようなものがあります。

会陰切開を体験したママの意見

  • 陣痛に必死すぎていつ切られたのか分からなかった
  • 麻酔がチクっとした後、「バチン!」て聞こえて終わった。何が起きたのかよく分からなかった
  • 会陰切開よりも縫合と抜糸が痛かった

会陰切開自体は陣痛が起きている時に行うこともあって、痛みを感じない人が多いようです。
一方で、無事出産が終わり、気が緩んだ所で縫合を行うため「まだ痛いことするの?」と思ったママや、抜糸で痛みを感じるというママも少なくありません。

会陰切開をしなかったママの意見には以下のようなものがあります。

会陰切開をしなかったママの意見

  • 会陰切開しなくても殆ど傷になることなく分娩できた
  • 少し会陰裂傷ができたものの、そんなに痛くなかったし治りも早かった
  • 重度の会陰裂傷になってしまった。入院中、痛み止めが切れると激痛で赤ちゃんのお世話どころではなかった

会陰切開自体を必要としないケースもあることや、軽度の裂傷であればママの負担にならないことがよく分かる一方、重度の会陰裂傷になってしまうと痛みが長く続いて赤ちゃんのお世話にまで支障が出てしまいます。

中には出産後半年を過ぎても、重度の会陰裂傷の傷が完全に治りきっていないというママもいました。

会陰切開の痛みはいつまで続く?

回復の早さは人ぞれぞれではありますが、最初の2~3日が痛みのピークで、1週間前後で落ち着いてくる方が多いようです。傷口は退院までにはほぼくっつきます。
産後1ヶ月までに痛みや違和感が消えることが多いですが、腫れや強い痛み・ひきつれなどの症状がひどい場合は、産婦人科へ相談しましょう。

会陰切開に関する希望をバースプランに記入しよう

多くのママの本音は「しなくていいなら会陰切開はしたくない。でも自分や赤ちゃんにとって必要なら我慢する」という感じではないでしょうか?

しかし「お母さんになるのにこんな我儘言ってもいいの?」と思う人や、「したくないって言ったばっかりに会陰裂傷になったらどうしよう」と思う人もいるでしょう。

まず、お産に関する希望を伝えることは我儘ではありません。ママ自身が納得し、安心して出産に挑めるよう希望を伝えることは大切です。

次に、いくら妊婦が「会陰切開をしたくない」と言っても、重大な会陰裂傷を引き起こすリスクがある場合は医師から必要性の説明をされます。「会陰切開をしないと最初に言ったから、重い会陰裂傷になりそうだけど言わなかった」なんてことは無いのです。

お産への希望や、お産について不安に思うことを、直接医師や助産師に相談するのもよいですが、陣痛時に自分で冷静な判断ができそうにないならバースプランに記入して提出しておいてはいかがでしょうか。

「できれば会陰切開はしたくないけど、必要であれば処置をお願いします。」
「会陰切開が必要な場合は、声をかけて欲しいです。」

など、自分の気持ちをしっかりと医師や助産師に伝えておきましょう。そうすることで、不安を取り除き安心してお産に挑めるようになります。

まとめ

会陰切開について紹介してきました。あまり聞き馴染みのない言葉ですが、必要であれば会陰裂傷の重症化や赤ちゃんのスムーズな分娩のために処置を受けることになりますので、これからお産を行う人は知っておくべき内容と言えるでしょう。

会陰切開を行う判断は病院によって基準が大きく異なります。エナレディースクリニックでは、なるべく会陰切開を必要としない分娩を推奨しています。必要性の高いケースを除いて、しっかりと会陰を伸ばせるよう医師や助産師が陣痛時からサポートを行うため、安心してお産に挑んでください。

また、会陰切開に関するさまざまな希望や不安もお気軽にご相談頂ければ、ママに寄り添ったお産をお手伝いします。ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の監修
エナみらいグループ総院長 宿田 孝弘
宿田 孝弘
エナみらいグループ総院長
札幌・石狩の産婦人科「エナレディースクリニック」の宿田です。母と子に優しいお産、女性が求める医療がエナにはあります。札幌・石狩市での出産や婦人科疾患のお悩みなど、お気軽にご相談ください。