妊娠が確定してから出産まで、ママと赤ちゃんの健康状態を確認するために行われる妊婦健診。
特に初めて妊娠したママは約10ヵ月間、妊婦健診でどんな事をするのか分からないという人も多いでしょう。
この記事では妊婦健診の内容やスケジュールを解説。健診内容の詳細を解説する他、妊婦健診の費用相場、妊婦健診の必要性なども紹介しています。
妊娠を希望している人や、妊娠して今後のスケジュールを知りたいという人は是非参考にしてみて下さい。
妊婦健診とは
妊婦健診とは、妊娠期間中のママと赤ちゃんの健康状態を確認するための健診です。
健康状態の確認以外にも、病気の早期発見や赤ちゃんの成長を確認する目的も含まれ、ママと赤ちゃんが心身共に健やかな妊娠期間を過ごすための健診と言えます。
妊娠週数の経過と共に健診の間隔は短くなり回数も増えるのが基本です。
妊娠週数 | 基本的な健診の間隔 |
---|---|
~24週 | 4週間に1回 |
24週~35週 | 2週間に1回 |
36週~ | 1週間に1回 |
ただし、上記はあくまで目安です。ママや赤ちゃんの状態によっては、もっと頻繁に健診を行う場合もありますが原則としてこれ以上健診の間隔が開くことはないでしょう。
妊婦健診の内容とスケジュール
妊婦健診と聞いて、お腹にエコーを当てて赤ちゃんの様子をモニタリングするイメージを持つママが多いでしょう。
しかし、妊婦健診で行うのはそれだけではありません。妊婦健診で行う健診内容やスケジュールについて解説していきます。
初回受診~予定日決定まで
妊娠検査薬を使って陽性反応が出た場合や、生理の遅れ、つわり等妊娠の予兆を感じた場合はすぐに産婦人科に受診しましょう。
病院で行う妊娠検査は生理予定日1週間後から受けることができます。
●初回受診から予定日決定までの妊婦健診内容
- 尿検査
- 経腟エコーによる超音波検査
病院によっては、この時期に血液検査を行う場合も。妊娠は病気ではないため、これらの診療は自費診療となり、多くの自治体では予定日決定後母子手帳と共に妊婦健診費用補助券が交付されます。
自治体によっては、補助券の交付に妊娠診断書が必要な場合もあるため事前に確認しておくと良いでしょう。
妊娠初期(~23週まで)
妊娠初期の基本的な健診内容は以下の通りです。
●妊娠初期の基本的な検査項目(4週間に1回実施)
- 血圧測定
- 尿検査
- 体重測定
- 腹囲、子宮底長の測定
- 血液検査(血液型検査、血算、血糖検査、各種抗体検査、期間内に1回)
- 子宮頸がん健診(初期に1回)
- 超音波検査
厚生労働省の指針によると超音波検査は妊娠初期の期間内に2回とされていますが病院によって回数は異なり、毎回健診時に超音波検査をする場合も。
特に妊娠初期の超音波検査では赤ちゃんの心拍確認や、子宮の異常、子宮筋腫や卵巣嚢種の有無などを調べるためにも大切な検査です。
妊娠中期(24~35週)
妊娠中期の期の基本的な健診内容は以下の通りです。
●妊娠中期の基本的な検査項目(2週間に1回実施)
- 血圧測定
- 尿検査
- 体重測定
- 腹囲、子宮底長の測定
- 血液検査(血算・血糖検査、期間内に1回)
- B群溶血性レンサ球菌検査(期間内に1回)
- 超音波検査
妊娠中期からは健診の間隔が短くなり2週間に1回の頻度になります。
妊娠糖尿病が疑われるママはこの期間に糖負荷試験を受けることも。
妊娠中期に行う血液検査では血算という全血球計算を行います。
血算することで貧血の有無や白血球数、血小板の異常の有無を調べることができ貧血の値が出たママは、鉄材の処方や食生活の指導を受ける場合も。
殆どの病院では妊娠中期になると経腹エコーによる超音波検査を行いますが、ママや赤ちゃんの状態によっては経腟エコーを用いて詳細な超音波検査を行い早産リスクの有無を調べる場合があります。
妊娠後期(36~出産まで)
妊娠後期の基本的な健診内容は以下の通りです。
●妊娠後期の基本的な検査項目(1週間に1回実施)
- 血圧測定
- 尿検査
- 体重測定
- 腹囲、子宮底長の測定
- 血液検査(血算、期間内に1回)
- 超音波検査
- NST(ノンストレステスト)
妊娠後期ではいつ出産に至ってもおかしくありません。そのため基本は1週間に1度の健診ですが、予定日を超過した場合1週間に2度健診を行う病院も多いです。
さらに妊娠後期ではこれまでの検査項目にNST(ノンストレステスト)が加わります。
NSTでは、横になった状態のママのお腹にセンサーを装着。子宮収縮の有無や赤ちゃんの心拍をモニタリングして、赤ちゃんの健康状態を調べる検査です。
NSTは36週以降に行う病院が多いものの、中には34週でNSTを受けたというママもいます。
一回のNSTには30~40分かかるため、NSTを行う前の健診で事前に予告してくれる場合が多いですが、36週直前の健診でNSTの実施時期等を聞いてみても良いでしょう。
帝王切開での出産が予定されているママは、この時期に術前検査も行われます。
経腟エコーと経腹エコーの違いと切り替えのタイミング
妊婦健診でイメージされる、お腹の上から赤ちゃんの様子が見えるエコー検査。
実はエコーには経腟エコーと経腹エコーの2種類があります。
経腟エコーとは
経腟エコーとは、プローブと呼ばれる棒状のセンサーを膣内に挿入して子宮内の様子を超音波によって調べるエコーです。
子宮に近い部分までセンサーを挿入できるため、細部が確認しやすく子宮だけでなく卵巣の状態を調べることもできます。
主に妊娠初期の経腹エコーでは診察が難しい小さな胎児の様子を詳細に確認するため使用する事が多いです。
ママと赤ちゃんの状態によっては妊娠中期以降でも、胎盤や子宮頸管の状態を確認するために経腟エコーを用いて検査することがあります。
経腹エコーとは
経腹エコーとは、お腹の上からプローブを当てて子宮内の様子を超音波によって調べるエコーです。
超音波がプローブから伝わりやすいよう、専用のゼリーを塗って検査します。
プローブから放出されている超音波は赤ちゃんの臓器や血管に当たって跳ね返り、再びプローブで探知します。
この超音波の跳ね返りを映像化してモニターに映し出すことで、赤ちゃんの様子や成長具合を調べることが可能です。
お腹の赤ちゃんを立体的に映し出す3Dエコーや、動いている様子を映し出す4Dエコーも経腹エコーの一種。
3Dや4Dは記念撮影的な意味合いで用いられることが多く、基本的な経腹エコーでは平面的に赤ちゃんを映し出す2Dエコーを用いることが多いです。
経腟エコーから経腹エコーに切り替わるタイミング
妊娠12週を経腟エコーから経腹エコーへの切り替えタイミングとしている事が多いです。
近年経腹エコーの精度も上がってきているため、中にはもっと早くから経腹エコーだったというママも。
服を脱ぐ手間や内診台への抵抗感、プローブを膣に挿入する際に痛みを感じる等の理由で経腟エコーを避けたいというママも少なくありません。
詳細に赤ちゃんの様子を調べる事ができる経腟エコーですが、どうしても負担になるというママは医師に経腹エコーへの切り替えを相談してみても良いでしょう。
妊婦健診中に行う感染症検査の内容
妊娠中行う感染症検査の種類には多くのものがあります。妊婦の感染症検査には母子感染のリスクが高い病気が多く赤ちゃんやママの生死に関るものも。
ママと赤ちゃんが安全に出産を迎えるためにも病気を早期発見して治療や対策を行い出産するための検査です。
主に血液検査やおりもの検査で感染や抗体の有無を調べますが、1つの検体で複数の検査が可能なので、ママへの負担はそれほど大きくないでしょう。
妊娠初期に行う感染症検査
妊娠初期(23週まで)に行う血液検査では以下の感染症や抗体の有無を検査します。
●基本的な感染症の検査項目
- B型肝炎抗原
- C型肝炎抗体
- HIV抗体
- 梅毒血清反応
- 風疹ウイルス抗体
この他【トキソプラズマ、生化学検査、凝固系検査、間接クームス】等も医師の判断で検査が行われる場合があります。
どれも母子感染や、出産時に産道で赤ちゃんが感染してしまう危険性の高い感染症です。
重篤な症状を引き起こす可能性もあるので、妊娠初期に検査をして対処や対策を考えながら出産を迎えられるよう早期に検査する項目として挙げられています。
妊娠中期に行う感染症検査
妊娠中期(24~35週)に行う感染症検査には以下のものがあります。
- B群溶血性レンサ球菌
B群溶血性レンサ球菌の検査では、綿棒型の検体器具で膣の入り口と肛門付近を擦って採取した検体を培養しB群溶血性レンサ球菌の抗体があるか調べます。
B群溶血性レンサ球菌は誰もがもつ常在菌の一種なので通常なら体に害はないのですが、抗体を持たないママから生まれる赤ちゃんにとっては重篤な感染を引き起こす可能性があります。
B群溶血性レンサ球菌抗体を持たない赤ちゃんは、自然分娩時に産道感染を起こすリスクが高く新生児GBS感染症にかかってしまうことも。
ただし、事前に検査をして抗体の有無さえ分かっていれば、抗生剤がよく効く常在菌なので対処方法があります。
陽性反応が出た場合は医師の指示をよく聞いて対処しましょう。
妊娠30週までに行う感染症検査
感染症検査の中には、初期や中期等のくくりに捉われずに行うものもあります。
妊娠してから妊娠30週までに行う感染症検査には以下のものがあります。
- HTLV-1抗体検査
- 性器クラミジア
HTLV-1は成人T細胞白血病の原因ウイルスで、ママがHTLV-1を持っているか検査をします。
成人T細胞白血病は母乳によって赤ちゃんに感染する病気なので、陽性反応があれば最初からミルク育児を行うなど感染を防ぐ手立てがあります。
成人T細胞白血病は老人期に起こる白血病で、女性の場合約2%、男性は約4~7%という低い発症率の病気。
発症率は低いものの、発症してしまうと重篤な症状の出る病気なので子供への感染を防げるよう事前に検査する必要があります。
性器クラミジアは性感染症として有名な病気です。女性は自覚症状が現れにくく、検査をして初めて感染を知る人も多い病気ですが、赤ちゃんにとっては肺炎などを引き起こす怖い感染症。
出産までに薬を服用して治療することができる病気なので、適切なタイミングでの検査が重要です。
妊婦健診の費用相場とは
妊娠していることが認められると自治体から妊婦健診補助券が交付されますが、自治体によって補助券の金額や交付される枚数は異なります。
妊婦健診費用を全額補助券で賄える場合もあれば、毎回1,000~3,000円程の自己負担がある場合も。
さらに任意で行う検査や追加検査を受けた場合には、補助券では足りず自己負担金額が増えることも珍しくありません。
初回の受診では、妊婦健診補助券を交付されていないため全額自己負担になることもお忘れなく。
妊娠は病気ではないため保険が効かず全額自己負担になります。初回の受診時には2万円程を持って行くと良いでしょう。
さらに妊婦健診終盤では、補助券を使い切って自己負担で健診を受けることも少なくありません。病院の定める金額によって差は出ますが、全体を通して妊婦健診で5万円程度を負担しているママが一番多いです。
妊婦健診を受けない場合のリスク
妊娠に気付かなかったケースや、経済的に健診を受けられないといった様々な理由で妊婦健診を受けない人も少ないですが存在します。
妊婦健診を受けない場合、様々なリスクが発生してしまうことを改めて知っておきましょう。
合併症になりやすい
普段健康な人でも、妊娠して様々な病気を発症してしまう人は珍しくありません。
特に妊娠糖尿病や妊娠高血圧症のような妊娠時に特別かかりやすい病気もあります。
妊婦健診を受けないと、これらの病気を早期発見・対処することができず悪化させてしまうことも。
中には赤ちゃんにまで影響を及ぼし重篤な病気を引き起こすこともあります。
周産期の胎児・新生児死亡率が上がる
周産期とは妊娠22週から生後7日未満の時期のこと。周産期死亡率とは、この間に死産となってしまった割合を表します。
妊婦全体の周産期死亡率が約3.5%に対して妊婦健診を受けていなかったママから生まれた赤ちゃんの周産期死亡率は約19.7%。
中には妊婦健診を受けて事前に対処できていれば助かる命も多く、妊婦健診は赤ちゃんの命を守るための健診であることが数値からも伺えます。
病院で受け入れ拒否される
感染症の中には血液感染等を起こすものもあり妊婦健診を受けていない場合、感染症の有無等が分からないとママや赤ちゃんだけでなく医療関係者にも感染リスクが伴います。
リスクが大きいことから妊婦健診未受診だという理由で、出産時に病院から受け入れ拒否されることも。
まとめ
ママの健康と赤ちゃんの健やかな成長を見守るための妊婦健診。全体の流れを把握しておくと安心して健診を受けることができますね。
医師の指示に従って適切に妊婦健診を受け、元気な赤ちゃんを出産しましょう。
当院の妊婦健診のスケジュールと内容は下記のリンクからご覧いただけますので、あわせて参考にしてみてくださいね。
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